上原 正三。 上原正三とは

上原正三先生のご逝去にあたって

上原 正三

最初は、今月(2020年1月)亡くなられたばかりの脚本家・上原正三氏を偲ぶつもりで購入したのですが、読んでいるうちに、そんな事とも関係なく、ぐんぐん引き込まれてしまいました。 何と言っても、上原氏の書いたシナリオは流れるような文面なので、完成した映像も思い浮かべやすいのです。 こちとら(多分、あなたも)、実際に完成した作品の映像やBGMがたっぷり頭の中に蓄積されていますので、未制作のシナリオですら、読んでて、完成した映像を脳内で構築する事が出来るのであります。 そんな訳で、「ウルトラQ」とか「ウルトラマン」の未制作シナリオであっても、シナリオを読んだだけで、完成した映像を見ているような気分にさせてもらえて、まるで未見だった幻の回を拝見したような感動すら味わえさせてもらえるのでした。 特撮ものでない初期の未制作シナリオでも、すでに、イメージを思い浮かべる事ができます。 特に私が衝撃を受けたのは、「怪奇劇場アンバランス」の未使用シナリオ「月下美人屋敷狂い」でして、実際に映像化された「サラリーマンの勲章」よりも、明らかに面白くて怖いです。 と言うか、「アンバランス」の上原氏のシナリオは、制作されなかった三作品(「月下美人屋敷狂い」の他、「朱色の子守唄」「おそろしき手毬唄」)の方が、採用された「サラリーマンの勲章」よりも絶対に出来がいいです。 これらが映像化されなかった事が、ほんとに悔やまれます。 付録DVDは、はじめ「なぜDVD付き?」とも思ったのですが、こちらのDVDには、もっぱら、準備稿やアイディアメモなどが収録されていたのでした。 手書きの原稿は、印刷物よりも、拡大できるパソコン画像データの方が、確かに読むのに適しています。 そして、未完成資料ばかりだからこそ、やはり、このDVDの収録作品でも、幻の作品を見たような感激をたっぷり味わえるのでした。 シノプシスどまりの「寒い夏」なんて、まさに幻の中の幻!でも、やっぱり、完成品がしっかり頭に思い浮かんじゃうんだなぁ。 上原正三氏の最初の脚本集『24年目の復讐』が刊行されたのが1985年なので、本シナリオ集はまさに「24年ぶり」のものとなる。 全700ページを越える本書の中には、円谷プロ時代、東映作品の名作、前シナリオ集では未収録だったアニメ作品から、戦隊ヒーロー、宇宙刑事シリーズまで幅広く所載されている。 特筆すべきは『ウルトラマンティガ』「ウルトラの星」や『M78星雲の島唄 金城哲夫37才・その時』といった金城氏への思いをこめた作品の脚本が載っていることだ。 大変に多作な方なので、本書をもってしても上原作品の数%を読んだことにしかならないが、それでも上原イズムに満ちた作品を厳選しているため、十分に氏の世界観を見ることができる。 上原氏はもちろん、編集陣の苦労がうかがえる労作だ。 『ウルトラ』や各特撮作品を研究する上で、一級の資料である。 まあこれは、川崎高(川崎高氏?)こと実相寺昭雄さんの著作権にも関わるでしょうから仕方ないかも。 でも読みたかった…というか観たかった。 ある意味で『ウルトラマンマックス』の第33話および第34話「ようこそ地球へ」にアイディアが生かされてるかも。 知りませんが。 ・『ウルトラマンマックス』の第13話「ゼットンの娘」および第14話「恋するキングジョー」の前後篇が収録されていない。 以上、飽くまでも個人的な不満点です。 でも、やはり附属のDVDを含め満点を附けざるを得ません。 99点という選択肢は存在しないので。 ・蛇足。 この本を購入されるくらいの方でしたら自明の理でしょうが、『ウルトラセブン』の未制作話「300年間の復讐」は、『私が愛したウルトラセブン』(作・市川森一)や『ウルトラヒロイン伝説 アンヌからセブンへ』(監修・満田かずほ)で、ある程度に具体的映像を観られます。 ご参考までに。 確かに、特典DVDの映像には疑問がある。 ウルトラシリーズ、および円谷プロ作品の話が多くなるのは仕方ない。 初代の企画・BLACKの初期メイン・劇場版新作のJにしか参加していない仮面ライダーの話が多く出てくるのも、まあ「ヒーロー」の話をする中で必然だろうからいい。 でも、アニメとかでもたくさん活躍している上原先生にしてみれば「単純に子供を楽しませる」ということは、決してうちなんちゅの作家論だけで語りつくせるものではないはずで、そういう点も語っていただいて、これからの若手作家がサブカルチャーの発展を考えるきっかけにしていくくらいのものにしてほしかったというのが本音。 特に白石さん、あなたインタビューの中でも「上原さんの『沖縄』以外の面も分析したかったんですけど。。 」と言っているのだから、開き直り過ぎないでやれることもあったでしょうに。 まあ、『帰ってきたウルトラマン大全』とか『怪奇大作戦大全』でも、妙に作家論によりすぎている人ではあったけど。。。

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上原正三先生のご逝去にあたって

上原 正三

上原さんの作品で、特に傑作と名高いのが1971年に放映された『帰ってきたウルトラマン』第33話「怪獣使いと少年」だ。 「宇宙人では?」と疑われ迫害される少年、無抵抗なまま群衆に殺害される宇宙人を軸とした重厚なストーリー。 沖縄出身者や在日韓国・朝鮮人といった国内のマイノリティに対する差別を象徴的に描き出していた。 筆者は2003年3月、都内で上原さんにインタビューした際に、なぜ子供向け作品で「怪獣使いと少年」という問題作を書いたのかについて聞いた。 彼の答えは、「インパクトが見た人の心の中に残るから」というものだった。 その上で、「クリエイティブの世界では、ある意味での狂気って必要」として過剰な自主規制を批判していた。 「あれも(放映したTBSの)局内ではかなり問題になって、修正も加えられたんです。 それで僕と(監督を務めた)東條昭平は草鞋を履かされてしばらく(『帰ってきたウルトラマン』の制作から)遠ざかったからね。 でも、そうやって作られたものはいい悪いじゃなくて、インパクトが真実の姿として、または映像として見た人の中に残っていくわけです。 富山のある中学校の先生は、『怪獣使いと少年』を教材にして生徒達に教えたそうです」 「何でもかんでも自主規制がはびこると、作品自体を貧しくするという気はしますね。 作家の想像力までを規制してしまう。 作家がお利口さんになっちゃうのね。 だって、作家って危ないものじゃない?表現の自由の中には、自分の良識の範囲内というのも当然ある。 でも、クリエイティブの世界では、ある意味での狂気って必要だと思うんですよ」.

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上原正三シナリオ選集

上原 正三

2020年1月8日夕刻、会社で正月休みのメール返信作業中、上原正三先生からメールが入った。 新年のご挨拶はいただいているので、何だろう、と訝りながらメールを開くと次のようなものだった。 「上原正三の長男の敬太郎と申します。 さる1月2日、父・正三が他界いたしました。 故人の遺志に基づき、葬儀は身内だけで執り行い、香典・弔問などはすべて辞退させていただきたく存じます。 よろしくお願い申し上げます。 」 なぬ〜、いま整理していたメールに上原先生からのメールがあったぞ、とすぐ前に戻ると、確かに1月2日10時31分のメールだ。 それは、老々介護を続けるため体力の回復に努めるという前回のメールに次ぐもので、新年の挨拶と年末に体調を崩したがもうメールも書けるようになった、といういつものように明るいユーモアのある内容だった。 驚き、すぐご自宅にお電話。 敬太郎さんが出て、2日に夕食を呼びに行ったら、倒れていたのだという。 葬送は家族で執り行って、一息ついて先生のメールを開き、私のメールに返信する形での敬太郎さんからのお知らせだった。 頭の走馬灯が急回転しだし、上原先生との想い出が溢れだした。 上原先生の本業である、「特撮を中心にしたファミリー向け30分ドラマ」や金城哲夫氏、円谷一氏との交流に関しては、朝日新聞「天声人語」や切通理作さん、秋田英夫さんなど多くの方が追悼文をお書きになっているので、書籍の想い出で追悼してみたい。 2009年のの出版が最初の出会いである。 上原先生を師と仰ぎ、熱烈なファンでもある、白石雅彦さん・秋田英夫さん・斉藤振一郎さんの三人が弊社を訪れ、上原先生のシナリオ選集を出版してほしい、とのお話しだった。 お三方のどなたとも初対面である。 熱意の籠もったお話をお聞きしているうちに、この本を出版するのが私の使命であるように思われてきて、即座にお引き受けした。 私の希望は、これまでにないシナリオ選集にしたいので、内容は厳選しどれだけ厚くなってもいい、ということで、作業が始まったのだった。 結局、A5判2段組ハードカバー744ページ。 よーし、ついでに先生の対談と活字化できなかった生原稿や印刷台本など、貴重な資料をCD・DVDに入れて付録にしよう、となった。 これは確かに、上原先生の本業を伝える上でこれまでにない貴重な書籍になったと思う。 本の製作過程で、上記三氏と上原先生を交え、近所の沖縄・奄美料理の居酒屋で飲んで出る話は、やはり故郷・沖縄の現在過去だった。 そこでの先生は、虐げられた故郷に想いを馳せるいち琉球人であった。 そんな中で、ご自分の少年時代の体験を基にした自伝的小説をお書きになっている、という話が出た。 私は、小説はほとんど出版していない我が社であるが、どうしても出させていただきたいと思い、恐る恐る「うちで出版させていただけないでしょうか」と問うてみた。 すると、先生は「あなたがやってくれるなら本望だ」と即座に応えて下さった………。 条件はただひとつ、うちなんちゅうの言葉はヤマトの言葉に直さないことだった。 それから8年、は何度も何度も推敲を重ね、2017年6月23日「沖縄慰霊の日」の発行日で弊社創業50周年記念として遂に刊行された。 この日、沖縄戦で散った多くの島民に献杯しながら飲んだ泡盛の味は、生涯忘れられないものになった。 この本は、この年の「第33回 坪田譲治文学賞」を受賞し、先生と二人で岡山に行き授賞式に臨み、一緒に飲んだ酒も格別の味だった。 法もない国もない少年時代の奔放な生活、あの一時の自由は先生の原点なのだろう。 とは言っても、アメリカ軍占領下から本土に「復帰」したという沖縄の現状はどうだろう。 本土から基地を押しつけられ、ヤマトの機動隊員に「土人」と罵られ、未だ世界有数の基地としてアメリカに占領されている沖縄、戦争中とさほど変わったとは思えない。 上原先生、私がいつか再び先生とお会いするとき、もう沖縄にアメリカの基地はありませんよ、といいながら古酒を飲めるよう、努力することをお誓いし、筆を擱きたいと思います。 上原正三先生、安らかにお眠り下さい。 2020年1月11日 現代書館 代表 菊地泰博.

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